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建築デザインの変化が生む新たな問題

家は勾配屋根で、軒が出ていて、窓の上には霧除け庇があるというのがセオリーでしたが、近年はフラットルーフ(陸屋根)、軒がゼロ、庇のないようなキューブ型の家が増えています。

こうしたシンプルなデザインの家が好まれる傾向にあると、時代の流れに乗ろうとする工務店が増えて、さらに普及していくことになりますが、こうしたデザインの家には結露の問題が起こるのではないかと危惧しています。

現代の木造住宅は高気密高断熱化が図られています。つまり隙間が少ない家です。隙間が少ない家は強制的に換気を行わなければなりませんが、24時間換気を回していると寒いから切っているという人の話もよく聞きます。

熱交換型の24時間換気システムであれば、ずっと回しっ放しでも寒くはなりません。そもそも24時間換気を切らないといけないくらい寒いということは高気密ではないということになります。

換気の重要性は室内に限ったことではなく、壁の中や屋根裏においても非常に重要ですが、デザインを先行させてしまうあまり、この壁内換気を甘く考えてしまうことが起こるのではないかと思います。

そもそもキューブ型の家は屋根がフラットなので勾配屋根と比べて屋根裏の高さが低くなります。また温められた空気は上に上がって行くので、勾配屋根の方が棟の部分(最も高い位置)から外部に排出されやすいですが、フラットルーフは言葉の通りほぼフラットなので屋根裏の空気が逃げにくくなってしまいます。

これを十分に理解したうえで、壁内や屋根裏の湿気を逃がす部位を水上と水下側の両方に設ける必要があります。

例えば左図は瓦棒屋根の軒のないデザインの住宅ですが、水上部にパラペットを立ち上げて最上部に10㎜程度の通気口を設けておいて、笠木でカバーする設計になっています。

これを塞いでしまうと屋根裏や壁内に溜まっている湿った空気の逃げ場が無くなり、屋根裏や部屋の湿度が高くなってしまいます。

屋根裏や部屋の湿度が高い状態が続くとカビが生えたり結露したりします。当然ながら、壁内に湿った空気が常時存在しているので、構造である木材はダメージを受けてしまい、結果として住宅の寿命が短くなります。

 

私たち人はコロナ禍において数年間マスク生活をおくりました。このマスクがもしも、呼吸が出来ない生地だったらどうでしょうか?私たちは呼吸ができなくなり生きられなくなります。

これと同じように、住宅も室内だけではなく、壁内、屋根裏、基礎においても呼吸を妨げないように造ることが家を長持ちさせるポイントなのです。

このように軒の出がない、庇がない家がダメなのではなくて、建物の形状を変えるのであれば、それに合わせて換気性能を確保するような設計が求められます。

 

 

 

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